シクライア海底遺跡 ―海に落ちた船乗りの言葉―

冒険日誌

海底遺跡。
これほどなまでに冒険への意欲を駆り立てられる言葉があるだろうか。
海釣りを終え、たまたま立ち寄ったイリヤ島の酒場で、俺は歴戦の冒険者だと、大声で、しかし呂律も回らず、明らかに泥酔しながら叫ぶ船乗りが、こんな言葉を口にした。
この島の北の海の底に遺跡がある。
水の膜で包まれ息ができる。
海底なのに珊瑚と遺跡が太陽の光で染まっている。
頭上には魚、海洋を支配するオーシャンストーカーの腸が見える。
俺が落ちた船も見える。船底がな……。
酔っぱらいの戯言など誰も聞く者はいない。私も直接は聞いていなかった。
しかし、船乗りの話す一語一句は確かに私の心を突き動かしていた。
明くる朝、私は海の上にいた。
大洋を雄大に航行する巨大船舶も波を切り颯爽と走る高速艇も私には無い。乗るとギシギシと音を立てる古びた漁船が私の船だ。だが、今はその船でさえも誇らしく思えた。冒険というスパイスに彩られ、鼻息も荒くなる。
海底遺跡。
酔っぱらいの空想か、はたまた……。
私は力を込めて舵を握り直した。

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