オルビア村 ―もしも故郷というものがあったなら―

冒険日誌

故郷、あるいはふるさと。
私にはその記憶がない。私は生まれた場所を知らず、育った場所も知らない。
だから人々が言う故郷、懐かしさを感じ、少し煩わしくもある場所、らしいのだが、私にはわからない。

だけど、ベリア村より海岸沿いを西へと進んだ時に、微かに聞こえてきた草笛の音に導かれれるようにたどり着いたこの村には、なぜだか初めて来たとは思えないほど、”懐かしさ”を感じていた。
旅に出ようと道を行く冒険者がかつての私の姿だったのだろうか。
それとも路地を走り回る子供だったのだろうか。
あるいは牛や豚を育てていた時代があったのだろうか。
その仕事を終え、夕暮れに美しく染まる村の中を歩きながら、高台から海を見て遠い世界を夢見ていたのだろうか。
でもお腹が減って、素朴だけど味の染みた美味しい料理を食べ、そして満足感を抱きながら眠っていたのだろうか。

何も覚えていない。
それでもここは私の故郷、そうあってほしいと思うような、そんな場所だった。

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